毎年、夏の高校野球が終わると、一抹の寂寥感に支配される。
盛夏の終わりという事も含め、だんだん気温が下がって 日の短い冬に向かっていくことへの本能的な反応なのかもしれない。楽しかった8月の記憶をとどめたい。
しぶこと奥川の8月というタイトルにしたのは
・二人の今後の活躍を心から応援したい。
・1年後に振り返って、日本人の移り気を非難する材料にしてみたい。
スポーツに興味のない方のために少し紹介
しぶこは 42年ぶりに海外メジャーである全英オープンに優勝した二十歳の女子プロゴルファーの渋野日向子選手の事である。
プロテスト合格の年に。日本のメジャー大会で優勝することにより、末席での出場権獲得からの優勝は相当な快挙であることは間違いない。
アメリカで賞金王になったことがある岡本綾子でさえも、2位、3位は何度かあるが優勝は達成していない。
メンタルな競技と言われる中で、笑顔でラウンドする彼女を海外メディアが『スマイルシンデレラ』と名付けた。日本での優勝後のフィーバーぶりは相当なもので、出不精な記者でさえも 先々週の軽井沢でのNECトーナメントを見に行こうか、本気で悩んだほどです。結果、断念したのは、しぶこフィーバーで大渋滞になり、出場選手すら遅刻しそうになったというニュースを見たからです。
もう一人の奥川君は
夏の甲子園の準優勝校の星稜学園のエースピッチャーです。
ひいき目なプロ野球のスカウトが、今の実力でプロで10勝出来る。という記事が出るほどの逸材。
160Km以上のスピードボールを投げる大船渡高校の佐々木朗希選手と今年のドラフトの双璧である。
決勝戦ですっぽ抜けたスライダーを4番バッターの井上君に3ランホームランされて、ほぼそのホームラン一本で、悲願の初優勝が手のひらから滑り落ちてしまったような気がする。
殊勲の井上君はドラフトにかかるだろうか?
初の全国制覇を成し遂げた大阪代表の履正社高校は 春のセンバツの初戦で奥川に3安打完封と完膚なきまでに抑え込まれた。
奥川を打てなければ全国制覇は無い。という固い決意のもと、筋肉トレーニングを重ねスイングスピードを上げて、豪速球投手を攻略した。
かたや、星稜高校ナインにも
奥川が抑えても打てなければ勝てないセンバツで 済美高校に逆転サヨナラホームランを浴びて甲子園を後にしたくやしい想いが、バッティングを成長させたのではないか。事実よく打った。
センバツで味わったコンチクショウという反骨精神のぶつかり合いは、履正社に軍配が上がった。
勝敗を分けたのは履正社には、もう一つのコンチクショウがある。
地区予選でぶつかることになる昨年の春夏連覇の大阪桐蔭高校である。
全寮制で、全国から優秀な選手が集まり、練習設備も整い、練習時間も制限が無い。
言ってみれば、全国から寄せ集めのエリート集団と地元出身者ばかりのチームとの対峙である。この比較は、現在の一部の勝利至上主義の高校野球界に一石を投じるものとなるのだろうか?
とにかく、就任30年目の監督の執念も乗り移ってか履正社は良いチームに仕上がった。指導者の力と、それを信頼した選手の努力と気迫で、全国制覇が実現した。
これから始まるU-18世界野球に履正社の選手が一人も選ばれていないのが、とても寂しい。